情報の偏向はあるし・・・・結局は多数決か。
でも多数決で「真実」や「知識」が決定されるってのもなあ・・・・
それら含めて非常に示唆に富んだ記事でした。
この程度の前提は知ってはいたのですが、よくまとまってるので。
ハーバード大から学ぶ、15歳になったWikipediaとの付き合い方 (ITmedia ビジネスオンライン) - Yahoo!ニュース
>2016年1月15日、世界的なWebサイト「Wikipedia」が“誕生日”を迎えた。15周年という節目を迎えた同サイトは、改めてその存在価値などが議論されるなど、世界で再び注目されている。
【日本の漫画「NARUTO」がよく検索されている】
「Wikipedia」はもちろん世界共通語。世界各国でローカルバージョンが存在し、その知名度は高い。現在では290の言語で無料のオンライン百科事典として利用されている。
言うまでもないが、ちょっとした調べものをしたり手っ取り早く情報を得るのには、非常に便利なサイトである。そして日本語のエントリーも非常に多く、大抵のトピックはカバーしている。
その便利さの一方で、当初からWikipediaといえば、情報の正確性がずっと議論されている。日本のメディア関係者でも、Wikipediaは「情報源として頼りない」という感覚をもつ人は多い。メディア関係者以外でも、そんなイメージを抱いている人は少なくないのではないだろうか。そして世界的に見ても、その信頼度の評価は真っ二つに分かれる。
そんな賛否のあるWikipediaだが、15歳になった同サイトを世界はどう見ているのか探ってみたい。誕生日を機にWikipediaとの“付き合い方”について改めて考えてみる。
●Wikipedia日本語版の検索ランキング
そもそもWikipediaは2001年1月に米国で始まった。基本的に一般の執筆者によって記事は登録、維持、アップデートされ、毎月世界で10万人ほどが編集作業に協力しているという(そのうち8万人は毎月5回以上、記事編集を行っている。一方、編集を行う人の数は2007年以降減り続けている)。また読者の皆さんもお気付きの通り、Wikipediaには広告が一切表示されない。というのも、同サイトは非営利団体(NPO)であり、現在のところは寄付によって賄(まかな)われているからだ。
今日では1日に7500の新規記事がアップされ、2001年から2016年までに3820万記事が掲載されている。ただ、それら記事のうち英語のページはわずか15%に過ぎず、残りの85%は英語以外の言語となった。アマゾン傘下のWebデータ分析企業Alexa(アレクサ)によれば、世界で最もアクセスの多いサイトのランキングで、Wikipediaは7位につけている。今や発祥の地である米国を飛び出し、世界中で日常的に利用されているのだ。
Wikipediaが世界的にユーザを引きつけているメディアであることは間違いない。そして利用者の多さから、各国の検索語ランキングを見れば、その国の今が分かると言われるほどになっている。
例えば2015年のWikipedia日本語版はこんなランキングになる。
1. Wikipedia
2. 山口組
3. アルスラーン戦記
4. ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
5. 日本
6. スター・ウォーズ・シリーズ
7. 進撃の巨人
8. オーバーロード(小説)
9. ONE PIECE
10. ももいろクローバーZ
それなりに妥当なランキングではないだろうか。山口組が2位なのはちょっと意外だが、日本の2015年を表していると言っていい(若者寄りではあるが)。ちなみに日本では、Wikipedia日本語版は年間を通して12番目に多くアクセスされているサイトである。
●海外で検索されている言葉
この検索語データは、世界的にみるとさらに興味深い。英語圏版とドイツ語版の1位は「2015年の死者」で、どんな人が他界したのかをリストした記事だった。またフランス語版とポルトガル語版では、日本の漫画である「NARUTO(ナルト)」が、ともに3位にランクしている。中国語版では、「日本」が検索の9位に入っている。それぞれの国の今が見事に垣間見られるのだ。
海外に行っても、やはりWikipediaを使う人は多い。アカデミックな世界でも、若い人ほどサクッとWikipediaにアクセスする人が少なくない。
最近では信頼度も上がっているように感じる。Wikipediaを過去6年にわたって研究している英リーズ大学のヘザー・フォード教授は2016年1月、こんなコメントをしている。Wikipediaの興隆を見て、「自分が、かなり静かなクーデターを目撃していることに気がついた。(Wikipediaによって)伝統的な権威ある情報源がその地位を奪われるというクーデターだ」
また少し前になるが、2005年には英科学誌ネイチャーが、一般的に正確で信頼がおけると認識されているブリタニカ百科事典とWikipediaを比較する実験を行っている。いくつもの項目を両百科事典から抜き出して比較を行ったのだが、正確さにおいて、両者には大した差がないことが判明した。この結果にWikipediaの創始者であるジミー・ウェールズはたいそう喜び、Wikipediaの記事(Wikipediaの信頼性)に、この結果を掲載しているほどだ。
ただそれでも、Wikipediaの正確性をどれだけ信頼していいのか分からないという人もいる。というのも、記事に間違いが含まれていると指摘する声があるからだ。例えば2万近くある医療系記事のうち90%に何らかの間違いが含まれているという報道がなされたこともある(これについては、サイト本来の目的が間違いを皆で直しながら公共財として共有するということなので間違いを正せば済むのだが、確たるソースを示す必要があるなど修正もそう簡単ではない)。
また基本的に誰でも記事内容の変更に関与できるというサイトの性質上、これまでも恣意的な修正などトラブルが起きている。当事者だけでなく、企業や政府のスピン(情報操作)担当者らが自分たちに都合のいいように記事を修正・改ざんするケースは少なくないのだ。
●記事の正確性が取りざたされている
オーストラリアやカナダ、ポルトガルは政府が修正を行っていたという話も指摘されているし、英BBCによれば、CIA(米中央情報局)の職員とみられる人物が、当時イランの大統領だったマフムード・アフマディネジャドの記事に修正を加えていたことが判明している。またバチカン法王庁のIPアドレスを使った人物が、アイルランド人政治家のページで恣意的な修正をした形跡も報じられている。もちろん他の宗教団体も同様の疑惑が報じられている。
基本的にWikipediaは、世界の人々の良心と、公共財を尊重するという意識に頼っているだけに、政治や国際情勢というせめぎ合いの中ではどうしても中立性に横槍が入ってしまう、ということだろう。
また大手メディア関係者も改ざんに関与している。ニューヨークタイムズ紙の関係者は、ジョージ・W・ブッシュ大統領のエントリー内に、「愚か者」という単語をあちこちに12個も散りばめて書き加えていた。またワシントンポスト紙の関係者が同紙のオーナーのリンク先を有名な大量殺人鬼のページに変更していたとして以前話題になったことがある。
最近では英国で2014年、1989年に起きた「ヒルズボロの悲劇」と呼ばれるサッカーの試合で起きた観客圧死事件のエントリーに、公務員の男性が誹謗(ひぼう)中傷の修正を加えていたことがIPアドレスから判明し、解雇される騒動が起きている。
こうした出来事から記事の正確性が取りざたされ、いつまでも一部から懐疑的な目で見られているのである。
またこうした問題だけでなく、Wikipediaにはさらに大きな視野で考えなければいけない課題があるとの声もある。どういう問題かというと、Wikipediaの修正を行う人たちがほとんど北半球の先進国に暮らす人たちであること。また編集をするのは男性が多いという事実。またそもそも修正できる人がインターネットにある程度詳しくないといけないため、知識を提供する人が自ずと限定されること、などだ。こうした事実によって、記事そのものにバイアスがかかっているということらしい。
●Wikipediaは信用に価するのか
ここまでWikipediaの賛否を見てきたが、結局のところ、同サイトは信用に価するのか。その“付き合い方”は、米ハーバード大学が学生たちに伝えているアドバイスが適切だと思うので、結論としてここに記しておきたい(ちなみに米国のトップレベルの大学でも今、授業を受けながら補助的にノートPCでWikipediaを見ているような学生は少なくない)。
「急ぎで情報が欲しいならWikipediaほど便利なものはない……それでもやはり、研究や論文などとなると話は違う。非常に注意深く扱わなければいけない。同サイトの注意書きにあるように、記事を書いている人は、あくまで書きたい人であって、書く人の専門性は問われない……意図的に偏った情報が出ていることもあるし、情報が古かったり、専門ではない人が執筆していることもある。Wikipediaの正しい使い方は、基本的な参考として読む程度にしておいたほうがいい」
日本語版になれば翻訳も介在するため、さらに情報が正確に伝わらないケースも出てくるかもしれない。多くの人々の手によって、誕生から15年にわたり作り上げられてきたWikipediaだが、今のところ、準備的な情報として付き合うことが賢明だということだろう。